天気予報は見ない

社会に中指を立てる元大学生のとりとめのない日常日記的エッセイと書き散らす妄言の隙間

穀潰しの虫3

「なんでだよ!セックスする約束までしたじゃんかよ!」

 

朝方、友人とカラオケをした帰り道

彼は半べそをかきながら声を荒げた

 

そうこの男、フラれたのである。

 

とても好感触だと自負していた

長かった雪が溶けて、春の匂いをもうそこまで感じていたのに

 

フラれたのである。

 

つい2時間前のことである。

 

正直カラオケどころではなかった

 

つい先程までクリープハイプを歌いちんこをおっ勃てていた性少年は、気づいたら優里を聴いて涙を流していた、下からの涙はカピカピに乾ききっていた

 

ヤってない、ヤってないが、ヤる約束はしていたそれも相手から

だが結局ヤれなかった

 

ヤる前に捨てられた

 

男なのに捨てられた

 

男っぽさを出さない戦略が裏目に出たのか、それとも酔いとともに目も醒めてしまったのか、今となってはわからない

 

そう

ヤらず捨てされたのだ。

 

この男、ヤらず捨てされたのだ。

 

今年に入って三度目のことである。

 

そりゃあ声も荒げるちんこも萎える酒の量も増える禁煙も失敗する朝も寝坊する上司にも叱られる仕事も辞める時間も有り余る髪も染めるクラブにも通う薬も始めるタトゥーも入れる母も悲しませる家も追い出される政治にも傾倒する政治系のSNSアカウントも運用する偏った知識も増える爆弾も作る......

 

 

             著:又吉針子

            『無敵の人の作り方』