(前回の続きです
しかし僕は怒られることを恐れて常に「さん」付けで友達を呼ぶようにしていました。
そういったクラスメイトも何人かいました。
そしてその時がきます。
ついに一人のクラスメイトが担任の前で「さん」付けせずに友達の名前を呼んでしまったのです。
瞬間、まずい、と僕は顔がこわばりました。担任に怒られるぞ、と身をすくめました。
しかし担任は素知らぬ顔、というより何の感情の変化もなく、僕らの話を聞いていました。
あれ?聞こえなかったのかな?
いや、そんなはずはない、これは後で怒られるパターンだな。
しかしそんなことはありませんでした。呼び捨てで読んだ友達に後から確認してみても、別に怒られてはいないそう。
え?どういうこと?
先生の決めたルールは絶対じゃないの?
大人が決めたことは絶対で、守らないと怒られるんじゃないの?
僕の中で何かが崩れます。
初めて、身体的理由以外で
気持ち悪い
そう感じました。
担任はただ気まぐれで僕らに「さん」付けを強制してきていたのです。
担任はさぞ気持ち良かったことでしょう。自らの良い先生像を満たすためにあれこれ僕らに教育してきてくれたのですから。
ふざけるな、なんだそれ、大人って自分勝手だ。
それから僕は友達の名前が呼べなくなりました。くん、ちゃん、さん、どれだ、どうすればいい、その答えは未だ出ていません。
校庭の裏庭にはもう見向きもされなくなったビオトープが、手入れもされず、寂しそうに佇んでいました。たぶん、今も。