今が、人生のターニングポイントなのかもしれない。
僕は21年間彼女がいたことがない。恋愛をしたことがない。
21歳の自分の周りには何故か僕のような人種が一定の割合でいる。顔が悪い訳ではないのに、性格が壊滅的に終わっている訳ではないのに、恋愛ができない人が。
最近そういう友達と、このままでいいのかと、このまま大人になっていってしまうのかと話す機会がとても増えた。
その度、人間の本能としての危機感が襲ってくる。
今日、夢を見た。見ず知らずの女の子に突然告白される夢。キスもした。
夢の中で初キスをした。
一人、ワンルームのベッドで目を覚ますと、現実を受け入れたくなくて、またあの夢に戻るために二度寝をした。あの娘はもうどこにもいなかった。
本能の危機感、焦燥感が夢にまで侵食してきて、存在しない彼女を送り込んできた。
最近はこんなことばかりだ。駅ですれ違ったカップルが本当に羨ましく見えて、バイト帰り一人の自分が本当に惨めに感じる。
隣の部屋から聞こえてきた喘ぎ声がずっと鼓膜にへばりついている。
自分が変わろうとしているのがわかる。
あんなに好きだった乃木坂には興味がないふり。部屋からグッズというグッズを排除し、友達からの乃木坂関連の会話には知らないふり、今そんなことしてるんだと興味がないふり。
あんなに汚かった部屋を掃除した。年中出しっぱなしだったこたつ布団をしまい、乃木坂グッズが置いてあった場所にはお洒落な小物を置いた。
徐々に、徐々に、自分が清廉潔白になっていく。灰汁の強い、偏った思想を頭から追い出していく。
予感がする。このままいけば彼女の一人でもできるだろう。一般的な幸せを手にすることもできるだろう。
でも
でもそれは本能の奴隷になることなのかも。
好きだったものを捨て、周りから好かれる自分になるだけ。それだけで幸せは手に入る。
好きだった自分を捨てる。
それを成長と呼ぶのだろう。成長したら好きだった自分のことは忘れ、今の幸せを噛み締めて生きていける。
それって、なんか悔しい。神の意思みたいな、DNAに刻まれた人間の本能に操られているみたいだ。
嫌だ、やっぱり嫌だ。この僕に清廉潔白は似合わない。まぁ、経験がないという意味ではこれ以上なく清廉潔白なのだけれど。
好かれるために、モテるためにありきたりな話ばかりしたり、自分を隠したりしたくない。
決めた。等身大の自分で、ぶつかる。気持ち悪い自分をどんどん出していく。
本能に抗ってやろう。
やつはこれからも、夢や、深夜や、一人の時に現れ、僕の灰汁を吸い出そうとしてくるだろう
危機感や、焦燥感が幾度となく襲いかかってくるだろう。
うるせぇ!僕は乃木坂が好きで、誰とも共有できないゲームを一人でやるのが好きで、ひねくれたお笑いが好きで、下ネタが大好きな変態だ!かかってこい!
もう迷わない。分岐点の看板をへし折って、まっすぐ進む。僕は僕が大好きだ。